2012年7月22日日曜日

福岡高決平成21年5月15日商事1874号66頁、金判1320号20頁


非上場会社の株式の価格算定については多様な手法があるが、一般的には、大きく①インカムアプローチ、②マーケットアプローチ、および③ネットアセットアプローチに分けられるといえる(日本公認会計士協会編『企業価値評価ガイドライン』(清文社、2007)等参照)。
もっとも、各アプローチとも、本決定も判示するとおり、一長一短である。すなわち、上記①は、将来期待される利益やキャッシューフローを基準とする評価方法(収益還元法、配当還元法、DCF法等)であるが、将来の予測に困難が伴う。また、上記②(類似会社比準方式、取引事例方式等)は、あくまで類似する上場会社や過去の取引事例等の存在を前提とせざるを得ない。そして、上記③は、特定の一時点における会社の純資産額(ストック)という観点からの評価方法(純資産価額法等)であるが、継続的な企業価値を評価する方法とはいえず、清算を予定している会社、あるいは資産の大部分が不動産等の固定資産であるような会社の評価に適していると一般にいわれる。

従来の裁判例では、会社の特性に応じて各方式を併用する手法が採られる場合が多く(東京高決平成元年5月23日判731号220頁、東京高決平成2年6月15日金判853号30頁、札幌高決平成17年4月26日判タ1216号272頁等)、本決定も併用の手法を採った。ホスピカ(筆者注一対象会社)は、介護事業(訪問介護、通所介護の設置運営、在宅介護支援センターの運営等)を目的とする会社であるところ、本件全証拠によっても、同社と類似する適切な会社を上場企業の中から見い出すことはできないので、②のマーケットアプローチを採用することは相当でないといわなければならない。

~略~本件株式価格の算定に当たっては、上記①のインカムアプローチの手法を重視する必要があるといわなければならない。
 しかしながら、同じくインカムアプローチとはいっても、本件では配当実績がないので配当還元法は採用し難いし、継続企業価値を把握するについて経営者の主観的判断に依存する利益よりも収支の差額として客観的に表示されるキャッシュフローに着目したDCF法が優れているにしても、前述したとおり、当該事業収支計画の予測(課税後純利益の予測)や投資利益率(割引率)の決定には困難が伴うというマイナス要因があることに留意する必要がある。(中略)ただし、DCF法は、継続企業価値の把握という面では正しいものを含んでいることは明らかであって、本件株価の算定にあたって、これを全面的に無視することは許されないといわなければならない。

~略~DCF法による算定結果に上記のとおりの問題点がある以上、本件では、残された評価方法である、ネットアセットアプローチを必然的に考慮しなければならない。上記アプローチは、貸借対照表記載の純資産に着目して価値を評価するもの、すなわち、特定の一時点における個々の資産価値に基礎を置く静的な評価方法であって、一般には、会社が近い将来解散する可能性が高いなどの特段の事情のない限り採用するべきではないとはいわれるものの、(中略)他の評価方法に依存することに少なくない危険性が認められる場合には、むしろ、同方法を基本にして算定するのが相当であるといわなければならない。

(中略)本件における株価の価格算定にあたっては、DCF法と純資産価額法を併用し(中略)その併用の割合は前者を3、後者を7とするのが相当である。




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