2012年1月22日日曜日

損害賠償請求事件 大阪高裁平成11年6月17日判決(判時1717号144頁、金判1088号38頁)

大阪高裁平成11年6月17日判決(判時1717号144頁、金判1088号38頁)

事案の概要
本件会社は、タクシー、貸切バス事業を目的として、昭和33年に設立された株式会社であり、資本金は6500万円、発行済株式総数は10万株である。
本件会社は、株主総会の特別決議を経て、昭和61年8月20日、特に有利な発行価額である1株1000円で、記名式普通額面株式2万株を発行した。
本件会社の株主であるAらは、上記新株発行は会社支配権の確立を目的としたものであり、取締役の任務懈怠・違法行為に当たるなどと主張し、本件会社の取締役に対して損害賠償の請求をした。
裁判所は、上記新株発行について、取締役としての任務懈怠があり、任務懈怠について悪意又は重過失があることを認定したうえで、損害額の算定について、下記のとおり判示した。

裁判所の判断
(一) 株式の適正価格を算定するに当たっては、通常、配当還元方式・収益還元方式・純資産価額方式・類似業種比準方式が適宜採用されている。

(1) 配当還元方式は、会社支配の目的を有しない少数一般株主には適合するが、特定の第三者割当を予定する場合や、本件会社のように配当が経営者の意思によって左右される会社には適合しない

(2) 収益還元方式は、将来各期に期待される利益を一定の利回りで還元計算するものであるが、会社の利益の多くは内部留保されることが多く、利益の増加が直ちに株主の収益の増加に結び付くものではない点で、会社の利益のみを基準とする方式は妥当とはいえない

(3) 純資産価額方式には、帳簿価額による方法と時価による方法とがあり、時価にも会社解散を前提として処分価額と企業継続を前提とする価額とがあるが、新株発行時の適正価額を算出するには、企業継続を前提とした時価を基準として算定するのが相当である。

(4) 類似業種比準方式は、非上場株式の評価方法として広く利用されているが、各業種・規模・利益・配当額等につき標本となるべき企業の選定に困難が伴う
従って、本件においては、純資産価額方式と類似業種比準方式の双方を用い、両方式を一定の比率で按分して株価を算定するのが相当と考える。

(二) 証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(1) 昭和59年9月、本件会社が○○に対し新株を割り当てた際、同年3月期(第26期)の決算に基づき類似業種比準方式に従って算定した株価は1株当たり3907円であった。

(2) 本件会社の昭和61年3月期(第28期)の決算に基づき類似業種比準方式に従って算定した株価は1株当たり2617円であった。

(3) 右昭和59年3月期の決算に基づき、公認会計士△△作成の鑑定評価書を基礎に時点修正等を行った後の本件会社の評価後純資産は、次のとおり1株当たり9023円となる。
(ア)~(ウ)略

(4) 取締役らは、純資産価額方式によるときは帳簿価格によるべきで時価に修正評価すべきでないと主張するが、同方式は会社の実質的価値を評価して株価を算定するものであるから、時価評価が可能な場合にはそれによるのが相当である。右主張は採用できない。

(三) 以上のように、本件会社の昭和61年3月期の決算を基礎に株価を算定すると、類似業種比準方式では1株当たり2617円であり、純資産価額方式では1株当たり9023円となるので、前者を2、後者を1の割合で按分するのが相当と認められ、そうすると、1株当たりの株価は4752円となる。


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