2012年1月22日日曜日

譲渡制限株式の売買価格決定申立事件 東京高裁平成元年5月23日決定(判時1318号125頁、判タ731号220頁、金判827号22頁)

東京高裁平成元年5月23日決定(判時1318号125頁、判タ731号220頁、金判827号22頁)

事案の概要
本件会社は、洋装雑貨の販売及びその附帯業務を目的として、昭和47年1月に設立された株式会社であって、発行済株式総数21万株、資本金1億0500万円の会社である。
本件会社は、昭和57年7月期から昭和61年7月期まで毎期約63億円から約74億円の売上を計上し、約5000万円から約2億9000万円の税引後当期利益を上げ、業界において売上高第1位の地位にある。
純資産額は、逐年増加し、昭和61年7月期における純資産額は約18億円である。
株主配当については、年15~30%の配当を実施している。
Aは、その所有する本件会社の株式1万9000株(約9%)を譲渡するに際し、昭和61年5月23日付け書面をもって同会社に承認を求めたが、同会社はこれを承認せず、B、C及びDを買取人と指定した。指定買取人であるBらは、いずれも本件会社の下請企業の代表取締役である。

裁判所の判断
1 前記認定事実によれば、本件会社は、経営は順調で今後の営業継続に特に問題はなく、近い将来における解散は予想されないこと、Bらの取得する株式は、発行済株式総数に対して合計でも9%に過ぎず、Bらが本件株式の取得により本件会社の経営を支配することはできないことが明らかであり、したがって、本件株式の取得者は、配当金の取得を主たる利益ないし目的とせざるを得ないから、右価格算定に当たって、基本的には配当還元方式を採用するのが相当である。

2 しかしながら、配当還元方式を採用するに当たっては、将来の1株当たりの配当額を的確に算出することは甚だ困難であり、結局は過去の配当額に依存せざるを得ず、必ずしも正確性は期し難い。本件会社においては、前示のような資産額の増加状況からすると、収益の相当割合を社内に留保して資産を増加させることに重点がおかれ、配当額が比較的低く押さえられてきたことがうかがわれる。しかも、配当額は直接的・最終的には支配株主の意思により決定されるが、殊に本件会社のように同族会社的色彩が濃厚で少数者による支配が確立している会社では、右決定は経営担当者や支配株主の経営政策に依拠するところが多く、それ自体不確定要素の高いものである。他方、支配株主が全く恣意的に配当額を定めることは、会社経営の継続を前提とする以上許されず、会社の資産、収益の内容、程度を勘案せざるをえないし、支配株主の意思も不変ではないから、過去の配当額に多くを依拠する配当還元方式のみによることは不十分であり、純資産価額方式及び収益還元方式をも併用するのが相当である。

3 更に、商法204条の2による株式発行会社の株式譲渡の不承認及び譲渡の相手の指定は、当該会社が自己に不利益な株主を排斥するために認められた手段であり、その反面、当該会社の利益のためその限度で株主の株式譲渡の自由に制限を加えるものである。株式を自由譲渡するに当たっては、譲受人の意思がその価格の決定に大きく影響するところ、本件株式数は少数株主権の行使を可能とするものであり、本件会社がAの譲渡予定者を忌避したことは右譲渡予定者が単に配当利益の取得のみに関心を抱くものでないこと、また本件会社とBらとの前示の関係からすると、本件会社代表取締役が将来において本件株式を取得する可能性が少なくはないことが推認される

4 以上の事情を斟酌すると、三方式併用の割合は配当還元方式を6、簿価純資産方式及び収益還元方式を各2とするのが相当である。

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