2012年1月22日日曜日

譲渡制限株式の売買価格決定申立事件 東京高裁昭和63年12月12日決定(金判820号32頁)

東京高裁昭和63年12月12日決定(金判820号32頁)

事案の概要
本件会社は、昭和44年6月24日に不動産の賃貸及び管理等を目的として設立された株式会社である。本件会社の発行済株式総数は1万株であり、その株主構成は、Aが3000株、本件会社の取締役Bが6000株、本件会社の代表取締役Cが1000株を所有していた。
本件会社は、資本金500万円で、その資産は、借地権(約30億円相当)と当該借地上の建物がそのほぼ全てであり、その営業は当該建物を第三者に賃貸することのみであって、直近2年間の年間平均利益額は92万6000円であるが、株主に対して利益配当は実施していない。なお、従業員は全く雇用していない。
Aは、その所有する本件会社の株式3000株を譲渡するに際し、昭和61年12月15日、同会社に承認を求めたが、同会社はこれを承認せず、Bを買取人と指定した(これによりBは9000株(90%)を所有することになる。)。

裁判所の判断
1抗告理由一について
(「事案の概要」で摘示した諸事情を認定したうえ)右認定事実によれば、本件会社は、営業の利益をあげて株主に配当することよりは、むしろ、資産の保有を目的とする色彩の濃いものであるが、ともかくも、会社設立以来19年間にわたって営業を続けてきており、今後直ちに解散して清算するというものではないと認められるから、清算を擬制した純資産価額方式のみによって本件株式の売買価格を決定するのは相当でなく、会社の存続を前提とした算定方式による価格をも斟酌して決定すべきである。したがって、純資産価額方式にのみよって本件売買価格を算定すべきであるとのAの主張は採用することができない。

2抗告理由二について
Aは、Bは本件株式を取得後は、これをいつでも取締役会の承認を得て第三者に高価に売却できる立場にあるのであるから、譲渡制限のあることを理由に本件株式の売買価格を減額することは、Aの犠牲においてBを利得させることになり、不当であると主張する。しかしながら、本件売買価格は、本件株式の売渡請求時における譲渡制限のある状態での客観的価値によって決定すべきものであって、会社の指定した買主が誰であるかといった主観的事情により左右されるべきものではないから、Aの右主張は採用することができない。

3抗告理由三について
Aは、○○株式会社との間で本件株式を1株当たり15万円をもって売買する旨の合意をしているから、その価格をもって本件株式の売買価格とすべきであると主張するが、右合意のあることのみをもって、直ちにその合意価格を本件株式の売買価格とすべきものではなく、他にその合意価格が客観的、合理的なものであると認め得る資料は何もない。したがって、Aの右主張も採用することができない。

4 本件の場合、本件会社に類似した上場会社は見当たらないから、業種、態様の類似する上場会社を選択し、収益、配当、純資産等を比準して株式の価格を算定するところの類似業種比準方式は、これを採用し難く、また、本件会社は、利益配当をしていないから、利益配当還元方式もまた採用し難い。したがって、本件売買価格は、前記の純資産価額方式と収益還元方式を併用して算定すべきであり、本件会社の実態に鑑みると、その併用は、会社の資産に対する持分としての要素を重視し、前者による算定額の7割と後者による算定額の3割をもってするのが相当である。

5 そこで、まず、純資産価額方式により、本件建物と本件借地権の価格合計29億1970万2000円から負債総額6968万円を控除し、さらに清算のため右資産を処分した場合に納付すべき法人税等16億2190万1000円を控除し、その残額を総株式数の1万株で除して、本件株式の1株当たりの売買価格を算定すると、その額は12万2812円となる。
また、収益還元方式により、年間利益額92万6000円を総株式数の1万株で除し、利益率を年10%として、本件株式の1株当たりの売買価格を算定すると、その額は926円となる。
次いで、本件株式が、非上場株式で市場性がなく、かつ、譲渡制限が付されているものであることに鑑み、さらに3割を控除して、本件株式の1株当たりの売買価格を算定すると、その額は6万0372円となる。


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