2012年1月22日日曜日

譲渡制限株式の売買価格決定申立事件 東京高裁平成2年6月15日決定(金判853号30頁)

東京高裁平成2年6月15日決定(金判853号30頁)

事案の概要
本件会社は、電気計器、測定器の製造販売等を目的として、昭和26年11月に個人企業として創設され、昭和27年7月に株式会社に改組されたものであって、発行済株式総数18万4800株(うち約20%を代表者家族が所有)、資本金9240万円の会社である。
昭和58年6月期における純売上高は約14億円、売上利益は約8200万円、当期利益は約3400万円、株主配当金は約1000万円である。
Aは、その所有する本件会社の株式300株(0.16%)を譲渡するに際し、同会社に承認を求めたが、同会社はこれを承認せず、Bを買取人と指定した。

裁判所の判断
3 そこで、本件株式の価格の算定方式について検討する。
先ず、○○鑑定によれば、本件株式の価格算定に関しては、比較の対象として適切な類似の会社あるいは類似業種の会社は見当たらない、というのであるから、本件においては類似会社比準方式あるいは類似業種比準方式を採ることはできない。次に、本件記録によれば、本件売渡請求の約1年3か月後の昭和59年11月に、株式会社○○銀行及び株式会社△△銀行が、それぞれ本件会社の株式3760株を1株あたり700円で本件会社グループ持株会に売り渡したことが認められるが、右価格が客観的交換価値を適正に反映したものであることを認めるに足りる資料はない。したがって、本件においては取引先例価格方式を採ることはできない。さらに、本件記録によれば、本件売渡請求の直前である昭和58年6月30日現在における本件会社の株式保有割合は、東京中小企業投資育成株式会社26.4%、代表取締役及びその家族20.5%、A14.1%、○○銀行及び△△銀行各7%、専務取締役及びその家族4.9%、従業員その他の株主52名20.1%であることが認められるところ、本件株式は発行済株式総数18万4800株のうち300株であって僅かに0.16%であり、本件株式の譲渡によって本件会社の経営支配権に消長はなく、Aは少数株主にとどまるものであるから、収益還元方式は採ることができない。また、本件記録によれば、本件においては名目資本と実質資本との乖離が著しいことが認められるので、簿価純資産方式によるのは妥当ではない。そうすると、従来提唱されている株式価格の算定方式のうち残るのは配当還元方式と時価純資産方式であるが、前記のとおり、配当還元方式は、売買当事者が配当のみを期待する一般投資家である場合には、最も合理的な算定方式であるとされているのであるから、本件においても、基本的には、この方式によるのが相当というべきであるが、しかしながら、株式の価格の算定にあたっては、株式が配当をもたらすものであると同時に、株式が会社の資産を化体したものとの見方に立って算定することが妥当であるから、この配当還元方式とともに時価純資産方式をも加味して株式の価格を算定することが相当である。けだし、株式は、経済的には株主に配当金をもたらすものであるが、それと同時に法的には会社の資本に対応するものとして会社の資産を発行済株式総数で除した価値を表象するものであるから、株式の価格の算定においてこの点を無視することは相当でないというべきだからである。そして、この株式が会社の資産を化体したものであるという観点に立った場合における株式の価格の算定は、いわゆる時価純資産方式(時価純資産方式のうち処分価格による時価純資産方式によるのが相当である。)によるべきである(ただし、資産の評価差額についての法人税等諸税額相当額を控除すべきである。)。もっとも、この処分価格による時価純資産方式は、事業が継続しているにもかかわらず、会社が解散して清算したと仮定して会社の資産を時価で評価するものであるから、これのみで株式の価格を算定すべきものではなく、配当還元方式の修正要素として適用すべきものである(市場における株式の価格も、単に配当の額によってでなく、含み資産等を含めた当該企業の資産内容によっても左右されるものであることは、公知の事実である。)。

4 ところで、本件記録によれば、(「事案の概要」で摘示した)事実関係のもとにおいては、配当還元方式と時価純資産方式とを7対3の比重で適用して1株当たりの評価額を算定するのが相当と認められる。

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