2012年6月16日土曜日

裁判目的の株価算定における「公正な価格」とシナジー効果の関係


旧商法は、「決議ナカリセバ其ノ有スベカリシ公正ナル価格」での買取請求が認められていた(旧商法349条等)。
一見して 明らかなのは、会社法においては「決議ナカリセバ其ノ有スベカリシ」の文言が 削除されていることである。
会社法立案担当者による解説によれば、「決議ナカリセバ」 の文言が削除されたのは、「株式買取請求権を行使しようとする株主の中には、株式会社が合併等をすること自体については賛成であるが、合併等の結果、対価として交付される財産の割当に不満足である者も存在し得る」からである。
会社法制定の土台となる要綱作成に向けて議論した当時の法制審議会会社法(現代化関係)部会の議事録等からも、シナジー効果を株価算定に含めることを排除しないために、「公正な価格」とは決議がなかった場合の価格であるとは 法文上限定しない方向で要綱が固まったことがわかる。
したがって、「公正な価格」にはシナジー効果が含まれ得ることについては、 ほぼ争いがない。例えば、いわゆる交付金合併(キャッシュ・アウト・マージャー)において、プラスのシナジー効果があることについては争いがないが、それが十分に少数株主に配分されているかについて争われている場合、会社法ではシナジー効果が「公正な価格」の判断に織り込まれることとなる。

シナジーの分配の不公正は深刻な問題になる合併交付金等が多い合併の場合であり(江頭憲治郎『株式会社法』有斐閣771 頁)。
「公正な価格」がシナジー効果を含まないとすれば、例えば、現金しか受け取らない消滅会社の株主はシナジー効果をまったく享受できず、存続会社の株主が独占することとなる。

しかしながら、このことは、裁判所が常にシナジー効果を考慮しなければならないことを意味するわけではない。
例えば、マイナスのシナジーが発生しているような場合において、合併自体に反対した株主が買取請求をしたときは、決議がなかった場合に維持されていたであろう価値と一致する価格での買取を認めなければ、少数株主のために投下資本回収手段を確保しようとした立法趣旨に反することになる。
したがって、実際にシナジー効果を「公正な価格」に織り込むか否かは、具体的な事案における裁判所の判断に委ねられているといえる。
会社法が、単に「公正な価格」とした理由の一つは、場合により、シナジー効果を考慮することも考慮しないこともできるようにした点にあることは、法制審議会の審理経過からも窺うことができる。
鑑定人としては、評価業務を進める上で、当該事案においてシナジー効果を含めることが妥当であるか否かについて、裁判所と十分に打ち合わせる機会を持つべきである。
なお、定款等の変更について買取請求が認められる場合は、その性質上、シナジー効果は問題にならないので、商法と同様に、決議がなかった場合の株式の価格を裁判所が認定することとなる。


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